平成29年度事業計画

事業の方針

はじめに

 東日本大震災から丸6年、復興・創生期間に移行して1年が経ち、至る所で工事が行われ、復興が順調に進んでいるように思われる。しかしながら、未だに被災3県で12万7千人が避難生活を余儀無くされている。特に、福島県では震災関連死者数が2,086人(H29.1.16)にも及び、直接死の1,828人(行方不明者含む)を上回る事態となっている。帰還困難区域外については、除染が進み避難指示が全ての区域で解除された。少しでも早く安定した暮らしが出来ることを切に願います。

 当会員の被災地への最大の支援は、業務を通じて一日でも早く復興を行なうこと、そして震災前からの人口減少、高齢化など多くの課題を払拭し、地域を再生させることである。今後の業務は、福島沿岸部が中心になると思われるが、引続き、復興・再生支援を最優先課題として事業に取り組む。

 

業界を取巻く社会・経済環境

「3.11」震災後のわずか6年間に発生した激甚災害は全国で21件、東北は毎年のように被災している。平成28年の台風10号では、史上初の東北太平洋側上陸となり、岩手県で22人もの犠牲者を出した。

下流域の津波災害に遭遇した住民が、今度は台風による河川氾濫で二重の災害に見舞われた。まだ津波の災害から立ち直っていない状況の被災となり、言葉の掛けようもない。 

改めて、東北が脆弱な国土であることを再認識させられた。

このように頻発する激甚災害の要因は、自然災害への対策がまだまだ不十分であることを物語っている。地震・津波、火山噴火、ゲリラ豪雨・豪雪、斜面崩壊の対策など、多くの災害防除を検討しなければならない。一方、老朽化しつつある多くのインフラの維持更新など、公共事業をめぐる課題は山積みである。

自然災害対策にはソフト対策も重要であり、住民に確実に伝えるためにICTを活用した情報の通信、リアルタイム情報の発信などの研究、より簡潔で効果的に避難準備が可能なハザードマップの公表・周知と活用推進、避難準備や事前教育・訓練、等々。災害から国土を守るための施策は尽きることがありません。

これらの課題は以前から指摘されてきたが、災害の頻繁化や大規模化、高齢化への配慮などで急激に課題解決の要請が高まったといえる。特に東北地方は人口流出や高齢化、少子化が全国一のワーストで、しかも積雪・寒冷地特有の気象環境が産業の定着に大きく関与するなど、課題が山積している。

東北地方は常磐自動車道路の4車化着工、日本海沿岸東北自動車道路や三陸沿岸縦貫道路が全線開通に向けて順調に進捗、JR常磐線の運行開始、北海道新幹線の開通や仙台地下鉄東西線の開業などここ4~5年で急速に整備が進む。復興で建設したインフラを生かし、既存産業の再構築と新たな産業誘致等の大きな展開が必要である。

また、大型放射光施設や超大型加速器の国際リニアコライダー誘致、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉など様々な研究拠点として、新たな東北経済の展開が期待される。

復興で建設されたインフラや計画されているインフラを、より高度なネットワークで連携する必要があり、復旧復興から成長ステージへの移行で、被災地だけでなく東北全体の活性化に繋げる必要がある。そのため、社会資本整備のあり方を提案していく。

また、建設産業の経営の合理化と建設生産性システムの効率化を図るため、生産性の柱となるi-Constructionを推進する。特に調査・設計・施工から維持管理を通じた情報、ノウハウのプラットフォーム化やフロントローディングの考え方に基づく全体最適設計の実現は重要な役割となる。

 

「3.11」から6年、今後の支部の役割

 本格的な工事が展開されているが、発注者側も施工業者側もマンパワーが足りない状況が続いている。震災復旧事業が設計から施工に移行した現状を踏まえて、支部としてCMや事業促進PPP、工事監督等、発注者支援業務に積極的に取り組む。

更に、前例にない集中して建設される構造物群は、数十年後には一斉に更新時期を迎える。構造物をより長寿命化するために、高耐久性材料の提案や初期欠陥の防止対策等、アセットマネジメントに傾注する。

被災地では多くのコンパクトシティ+ネットワークが完成しつつある。地方のまちづくりの先行事例であり、モニタリングとともに効果の分析に取り組む。

東北全域の地方自治体との災害協定締結は、一部を除きほぼ達成しており、今後は防災訓練などを通じて連携を強化する。

震災の風化が顕著になってきた。協会本部や業界を通じで、広く国民に広報活動を続け、防災・減災に尚一層に努める。

 

会員、業界の経営体質改善

震災需要が急減し、落札率の低下が顕著になり、調査基準価格への集中や低価格入札も横行している。今後、更に落札率が下がることが予想され、労働環境の悪化が懸念される。国は「発注者関係事務の運用に関する指針」を基に、全国統一指標を策定して、発注者に改善意識を喚起し、改正した品確法の浸透を推進している。その一方で、我々産業界が旧態依然の低価格入札をしては改善への逆行となる。自ら、受注ありきの体質改善から脱却することが必要である。

また、過酷な労働で犠牲者が相次いだことから、国は罰則を伴う時間外労働時間の上限規制を設けることで、各産業界と調整している。当協会の調査でも明確な通り、長時間残業を課題としている会員が多い。各社の働き方改革が必要なことは無論であるが、残業の原因が発注者に拠るところも多いため、適正な工期や発注条件の整備、単価の更なる改善などを、要望・提案して行く必要がある。

 

入札・契約制度の改善

人材が集まり,魅力ある業界とするためには、価格競争ではなく、総合力(価格と技術力双方のバランスが取れていること)による競争が必要である。このため、意見交換会では現在考えられる最善策として総合評価落札方式やプロポーザル方式の入札契約制度の導入を要望してきた。また、地域コンサルタントの成長を促す共同設計方式やJV、地域要件等の枠組みも積極的に取り入れ、経営力と技術力向上を目指して、競争力強化に努めていく。

技術力競争の必要性は、各県とも理解を示しているものの、本格的な採用には至っておらず、改正された品確法の趣旨に則り、引続き提案と要望を行なう。

全国に先行した新たな入札契約制度(PPPやPM、CM等)は、大詰めを迎えている。

これらの入札契約制度は、今後の効率的な予算執行や、発注者の人材不足に有効と思われ、制度の有効性や課題等を分析・検討し、業界として採算性を確保できる制度となるように努める。

 

 以上のような認識のもとに、本年度の具体的な方針として以下の事業活動に示す

 

[平成29年度事業の方針]

1.東北地方の社会資本整備の担い手として、東日本大震災からの復興を支援すると共に、住民に豊かな生活、地域の安全・安心が保てる社会資本整備の必要性を訴えていく活動を継続実施する。

 2.魅力ある建設コンサルタントとするため、受発注者協同による健全な労働環境の改善を提案し、担い手が集う環境の整備を進める。

3.災害協定に基づく連携を強化するため、既定の協定の見直しや訓練等を検討する。

4.プロポーザル方式及び総合評価落札方式において、技術力を重視した方式や地域企業の参加可能な方式などを具体的に提案することにより、入札契約制度の改善を推進する。

5.価格競争方式において、東北地方整備局における入札価格向上の改善、地方自治体における低価格調査制度と失格基準の改善などを提案することにより、適正な競争制度の確立に寄与する。

6.会員企業が優良な技術と知恵を持続的に提供し続けるために、技術者育成と更なる技術力向上に取り組む。

7.建設コンサルタント事業領域拡大のため、発注者支援業務への積極的な取り組みと、CMなど新たな業務領域を提案する。また、コンサルタントの多様な活用を図り、品質向上を実現するため、設計共同体方式の更なる活用を提案する。

8.不当な取引制限や不当な低価格競争等を排除し、コンプライアンスを遵守する。