令 和 7 年 度  事 業 計 画

事業の方針

はじめに

 昨年も国内では、猛暑や豪雨、台風、洪水、土砂災害など自然災害が全国各地で発生しました。7月には秋田県と山形県で記録的な大雨により甚大な被害を受け、元日に発生した能登半島地震で被災した能登半島北部は、9月には豪雨により再び大きな被害を受けました。冬になると北海道地方や本州の日本海側を中心に大雪に見舞われました。

10月に行われた衆議院議員選挙では与党が大きく議席を減らしました。新たに発足した石破政権は、経済成長による所得向上や安全保障、少子化・災害対策、地方創生といった施策を重点課題として掲げています。しかし、少数与党という厳しい状況の中で、与党内外との調整が必要な場面が多く、政権運営は難航しています。

11月に行われたアメリカ大統領選挙では、ドナルド・トランプ氏が勝利を収め、再び大統領に就任しました。トランプ政権の復活により、関税引き上げや移民政策の強化、エネルギー政策の見直しが進められ、特に対中関係の緊張が再び高まる兆しが見られます。一方、ウクライナ情勢は依然として不安定な状況が続いており、国際社会の支援が引き続き求められています。

スポーツの分野では、パリオリンピック・パラリンピックが開催され、日本選手団が多くのメダルを獲得し、国民に大きな感動を与えました。また、米大リーグでは大谷翔平選手が2年連続3回目のMVPを獲得し、その圧倒的なパフォーマンスが世界中のファンを魅了しました。文化面では、スタジオジブリの新作映画「君たちはどう生きるか」がアカデミー賞を受賞し、日本のアニメ文化が再び世界的な注目を浴びました。

業界を取巻く社会・経済環境

 近年、気候変動の影響により豪雨や大雪など気象災害が激甚化・頻発化しています。東北支部では、国や県との災害協定に基づく支援要請が増える中、平成の時代に締結した各県との災害協定で問題がある部分の一部見直しを進めていましたが、9月には福島県とこの4月には岩手県と改めて締結しました。また、3月には新たに公益社団法人宮城県建設センターと協定を締結しました。

令和3年度から重点的かつ集中的に取り組んできた「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」は今年度が最終年になることから、現在、この後継となる「実施中期計画」の策定作業が本格化しています。6月には閣議決定する予定となっており、これにより、継続的・安定的に国土強靭化の取り組みが進められることになります。

また、令和5年に閣議決定された第三次国土形成計画(全国計画)に基づく「広域地方計画」の策定作業が進められています。昨年12月には「新たな東北圏広域地方計画中間とりまとめ(素案)」が公表され、今後パブリックコメント等を経て今年度末頃の国土交通大臣決定・公表を予定しています。

さらに、昨年6月には、インフラ整備の担い手・地域の守り手である建設業等がその役割を果たし続けられるよう、担い手確保・生産性向上・地域における対応力強化を目的に、「担い手3法」が改正されました。

建設コンサルタントにおいても担い手の確保・育成は喫緊の課題です。今後も持続可能な社会を支えるインフラ整備の実現に取り組むとともに、業界の更なる魅力向上のため、様々な課題に対し積極的に取組んでまいります。

入札・契約制度の改善

 建設コンサルタントが今後も社会的使命を果たし続けるには、業界の自助努力だけでなく公共発注機関の理解と協力が欠かせません。そのため、

東北支部では毎年東北地方整備局及び東北6県・仙台市と意見交換会を実施しています。発注者も我々同様、担い手の確保や働き方改革、激甚化・頻発化する災害への対応、DXの推進など、様々な共通課題を抱えていることもあり、受発注者の相互理解は年々深まりつつあります。意見交換会で要望した事項が翌年度の制度改正に反映されることも以前より増えていることから、意見交換会の意義、重要性を改めて認識するとともに、支部役員そして対外活動委員会の皆さまのご努力に感謝いたします。

意見交換会は総合評価落札方式やプロポーザル方式等の入札契約制度が導入されていればこそ改善に向けての要望や議論が生まれ有意義なものになります。東北地方整備局には引き続き納期の平準化や自治体への指導を要望するほか、受注企業の集中を回避することを目的とした一括審査方式の採用や、地域コンサルタントの成長を促す共同設計方式、さらには地域要件等の枠組みについても積極的に提案していきます。

国土交通省の総合評価落札方式における賃上げ加点措置は、今年で4年目を迎えます。国の方針として持続的な賃上げを求められていますが、インフラ事業量が一定のまま賃金アップを続けていけば、年々利益は減少し、持続的な経営は成り立たなくなります。今年度の意見交換会においても、インフラ整備の中長期事業計画の策定とそれに伴うインフラ投資の拡大を強く要望することにします。

上述のような認識のもとに、本年度の事業方針を以下に示します。

具体の事業活動は、各部会・委員会の事業計画の通りです。

[令和7年度事業の方針]

1.東北地方の社会資本整備の担い手として、東日本大震災被災地の復興・再生を今後も支援していくと共に、住民に豊かな生活、地域の安全・安心が保てる社会資本整備の必要性を訴えていく活動を継続します。

2.魅力ある建設コンサルタントを目指し、受発注者協同による健全な労働環境の改善による働き方改革を実現し、担い手が集う環境の整備を進めます。

3.近年の災害の激甚化・頻発化を踏まえて、災害協定に基づく支援要請に対し迅速に対応できるよう、協定締結に向けた協議や訓練等を継続的に実施します。

4.プロポーザル方式及び総合評価落札方式において、技術力を重視した方式や地域企業の参加可能な方式などを具体的に提案することにより、入札契約制度の改善を推進します。

5.価格競争方式においては、地方自治体における低価格調査制度と失格基準の改善などを提案することにより、適正な競争制度の確立を目指します。

6.会員企業が優良な技術と知恵を持続的に提供し続けるために、技術者育成と更なる技術力向上に取り組みます。

7.現場見学会やレクリエーション、技術発表会など会員交流の機会を増やすと共に、一般の方々や学生に向けて、建設コンサルタントの仕事や魅力について積極的に情報発信します。

8.不当な取引制限や不当な低価格競争等を排除し、コンプライアンスを遵守します。