令和5年度事業計画

事業の方針

はじめに

 世界中が苦しめられたコロナ禍から3年、昨年からはロシアによるウクライナ侵攻に端を発するエネルギー価格の上昇や食料品等の物価高騰、さらには度重なる北朝鮮の弾道ミサイル発射、中国による台湾有事の懸念の高まりなど、多事多難な時代となってきました。
 そのような状況下ではありますが、3月13日からマスクの着用が個人の判断に委ねられ、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけも、現在の「2類相当」が5月8日からは季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられることが発表されました。
 コロナ禍もようやく出口が見えてきたことから、令和5年度支部定時総会は、4年ぶりに通常形式にて開催することにいたしました。
 但し、総会後の講演会・懇談会は各社1名の出席としており、次年度はこのような人数制限を設けなくてもよい完全なアフターコロナとなっていることを願うばかりです。

業界を取巻く社会・経済環境

 近年、「自然災害の激甚化・頻発化」というワードがよく使われるようになりましたが、
昨年は3月16日に最大震度6強を記録した福島県沖地震が発生しました。
 また、7月から8月にかけて東北地方では全県が豪雨災害の被害を受けました。
 国や県と当支部との災害協定に基づく支援要請に応えるため、会員企業の多数の皆様にご対応頂きました。この場をお借りして御礼を申し上げます。
 災害支援要請が増える中で、平成の時代に締結した各県との災害協定で一部問題がある部分の見直しに着手しておりましたが、昨年宮城県より協定見直しに合意を頂きました。
 同様の見直しを福島県や岩手県についても引き続き要請していくことにしております。
 また、国や県だけでなく市町村から個社あてに支援要請が来るケースも年々増えていることから、支部としての対応方針を定め、本年2月にオンライン説明会を実施しました。
 令和元年6月に改正された品確法では、災害対応強化のほか、建設コンサルタント等を含む建設産業の担い手確保・育成の枠組みが整備されました。法の趣旨に鑑み働き方改革と生産性向上を図りながら、我々は災害に強い国づくりを担っていかなければなりません。
 「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」による公共投資は、全国的に順調に推移しています。我々も円滑な事業が行われるように積極的に取り組んでいくと共に、適切な予算が東北地方にも確保されるように強く要望していきたいと思います。
 今年度から直轄業務ではBIM/CIM原則適用がスタートしました。また、我々建設コンサルタント業では、労働時間の上限規制を定めた働き方改革関連法が令和元年度から適用されていますが、建設業では令和6年度から適用されることになります。
 そのため直近の令和5年度は、建設産業全体がデジタル化など様々な新しい技術を活用した生産性向上への取り組みに拍車がかかる1年になります。
 BIM/CIMや建設DXが進むことで、業務効率が向上するばかりでなく、この業界を目指す若い人が増えることになれば、働き方改革や担い手不足という懸案事項もいずれは解決できるものと期待しております。

入札・契約制度の改善

 東北支部では、東北地方整備局、東北6県・仙台市と毎年意見交換会を実施していますが、昨年の意見交換会後、支部の要望事項が翌年度の制度改正に反映されるなどの改善がいくつか発表されております。特に宮城県の入札契約制度では、数年来要望していた総合評価落札方式における管理業術者担当業務数の緩和(5件⇒10件)が実現しました。
 意見交換会の意義、重要性を改めて認識すると共に、支部役員そして対外活動委員会の皆さまのご努力に感謝いたします。
 意見交換会は、総合評価落札方式やプロポーザル方式等の入札契約制度が導入されていればこそ改善に向けての要望や議論が生まれ、有意義なものとなります。
 制度未導入、或いは制度は導入しているものの実際の発注が進まない県もあることから、改正品確法の趣旨に則り、引続き要望と提案を行います。
 東北地方整備局には、受注企業の集中を回避することを目的とした一括審査方式の採用や、地域コンサルタントの成長を促す共同設計方式、さらには地域要件等の枠組みについても積極的に提案していきます。
東日本大震災被災地の復興道路や、街づくりなどの整備を早期に行うために活用された事業促進PPP方式や、CM方式による復興街づくり事業は、その効果が実証されており、
発注者の人員不足の解消策として、活用領域拡大が期待されます。これらの入札契約制度について、今後の効率的な予算執行や、制度の有効性や課題等を分析・検討し、業界として採算性を確保できる制度となるように努めていきます。
 上述のような認識のもとに、本年度の事業方針を以下に示します。
 具体の事業活動は、各部会・委員会の事業計画の通りです。

[令和5年度事業の方針]

1.東北地方の社会資本整備の担い手として、東日本大震災被災地の復興・再生を今後も支援していくと共に、住民に豊かな生活、地域の安全・安心が保てる社会資本整備の必要性を訴えていく活動を継続します。
2.魅力ある建設コンサルタントを目指し、受発注者協同による健全な労働環境の改善による働き方改革を実現し、担い手が集う環境の整備を進めます。
3.近年の災害の激甚化・頻発化を踏まえて、災害協定に基づく連携を強化するため、協定内容の見直しや訓練等を継続的に実施します。
4.プロポーザル方式及び総合評価落札方式において、技術力を重視した方式や地域企業の参加可能な方式などを具体的に提案することにより、入札契約制度の改善を推進します。
5.価格競争方式においては、地方自治体における低価格調査制度と失格基準の改善などを提案することにより、適正な競争制度の確立を目指します。
6.会員企業が優良な技術と知恵を持続的に提供し続けるために、技術者育成と更なる技術力向上に取り組みます。
7.アフターコロナを見据え、レクリエーションや現場見学会などリアルな会員交流の機会を増やすと共に、一般の方や学生の皆さんに向けて、建設コンサルタントの仕事や魅力について積極的に情報発信します。
8.不当な取引制限や不当な低価格競争等を排除し、コンプライアンスを遵守します。